人間、年をとると必ず脳が衰えてきます。 私たちも、40歳を過ぎた頃から、昔のように人の名前を覚えられないとか、固有名詞がでてこない、
といったことを日常的に経験します。 そして、年をとるにつれてひどくなるような気がします。 しかし、これは「痴呆症」ではなく、自然な加齢現象
なのです。
一方「痴呆症(認知症)」は、このような老化現象とは異なり、脳に器質的な障害が発生して、急速に脳神経細胞が失われてしまう病気なのです。
最初は、物忘れが目立ちますが、数年の経過で奇怪な行動がみられるようになり、最後は人格が崩壊してしまう恐ろしい病気です。
そして、本人のみでなく、家族にも負担をかけてしまいます。 現在日本には、約150万人の痴呆症の患者さんがいるといわれ、2025年には、
約2倍の300万人の患者さんがこの病気で苦しまれると推定されているのです。
日本では、痴呆症(認知症)の原因として脳血管性痴呆(認知症)が多いといわれてきましたが、最近では、欧米のようにアルツハイマー型痴呆
(認知症)が増加し、全体の約50%を占めるようになりました。
アルツハイマー病は、1906年にドイツの精神学者アルツハイマーによって初めて報告された病気です。 この病気は、脳内に老人斑や神経
原繊維変化が見られることが特徴で、脳に構造的かつ機能的な障害が起きる退行性変性疾患といわれています。 現在のところ、ほんとうの
原因はなお不明で、徐々に障害が進行します。
脳血管性痴呆(認知症)とは、脳出血、脳梗塞などで脳細胞が失われて痴呆になる病気です。
この両者の鑑別点を簡単に言うと、
アルツハイマー病は、明るい表情で物忘れから始まり、ゆっくり徐々に進行し、途中で家族の人に物を取られたと騒ぎ出すといった特徴
がみられ、さらに病状が進行すると、家族がわからなくなります。
一方、脳血管障害性痴呆(認知症)は、暗い表情で、脳血管障害の進行と共に急に病状が進行するという特徴があります。
痴呆症(認知症)が疑われる時には、この両者の鑑別が大切であり、アルツハイマー病の全罹病期間は、数年から10年以上にもわたるので、
アルツハイマー病にならないためには、40〜50代から予防することが非常に大切になります。
◆認知症の主な随伴症状
・物とられ妄想
自分でしまいこんだ財布の場所を忘れて、家族に盗まれたと思い込む。
・不眠・睡眠障害
昼間は居眠りしたりボーっとしているが、夜になると眠れなくなり、落ち着かなくなる。
・うつ状態
気分が落ち込んで悲しんだり、何事にも意欲を示さなくなる。
・夜間せん妄
夜になると発作的に起こる精神錯乱の状態で、興奮して外に飛び出すこともある。
従来は痴呆症(認知症)の有効な治療はありませんでしたが、最近では「ドネペジル(商品名:アリセプト)」という薬が開発
され、一般的な医療機関で保険診療薬として使用されています。
痴呆症(認知症)を完全に治してしまうことはできませんが、病状の改善や病気の進行を遅くする効果が認められています。
まず、一般的な痴呆症予防について解説する前に、静岡県の西部浜松医療センター顧問・金子満雄先生の考え方を紹介いたします。
金子先生は、「痴呆は環境因子に由来する病気」と考えられており、積極的に脳の訓練やリハビリをすることが、痴呆症の早期治療につながる
といい、脳活性化訓練の基本を次のようにまとめられています。
◆脳リハビリの方法
◎生きがいのある積極的な生活に切り替えさせること。 特に趣味、ゲーム、スポーツなどの右脳訓練を心がけるようにしてもらいます。 本人が
好むものを選んで、家族が一緒に週3回程度遊んであげるようにします。 老人会や公民館などで、仲間と一緒にやるのが有効です。
◎男女間のお茶飲み友達を作ってあげることが有意義です。
◎毎日定期的な肉体運動をさせます。 散歩なら、早足で毎日5000歩程度歩いてもらいます。 家族の誰かが一緒に歩き、いろいろな楽しい
話をすることが役立ちます。
さて、次に痴呆症を発症しやすいタイプについてまとめてみました。
◆痴呆症(認知症)を発症しやすい人
◎更年期以降の女性
◎高血圧症、高脂血症等の生活習慣病を持っている人
◎以前頭部に外傷を受けた人
◎偏食や過食、少食傾向で、特に魚と緑黄色野菜の摂取量が少ない人
女性の方が、男性と比較すると1.5〜2倍くらいの頻度で痴呆になりやすいことがわかっています。 女性は、更年期以降、
女性ホルモンが急速に減少することが、その一因と考えられています。
また、フィンランドの研究では、収縮期血圧が160mmHg以上の高血圧の人は、正常血圧の人に比較して約2.3倍アルツハイマー病
に罹患しやすく、また260mg/dl以上の高脂血症の人も、正常の人と比較して約2.1倍アルツハイマー病になりやすいことがわかって
います。
多くの疫学調査で、認知能力の低下と栄養素の関係が明らかになっています。
◆認知能力と栄養素の関係
◎ビタミンC、ビタミンE、βカロテンなどの抗酸化物質の欠乏
◎ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ニコチン酸、葉酸)の欠乏
◎亜鉛、鉄、カルシウムなどの微量金属、ミネラルの欠乏
◎コレステロールと飽和脂肪酸の過剰
このように、大切な栄養素の欠乏や生活習慣病発症を起こす、コレステロールや動物性脂肪の過剰が、痴呆症(認知症)の発症に深くかかわって
いることがわかります。
また、魚を大量に食べているグループは、ほとんど食べないグループと比較すると、明らかにアルツハイマー病になりにくい
ことがわかっています。
以上、痴呆症(認知症)の予防についてまとめてみますと、
◆抗酸化物の摂取を十分にし、緑黄色野菜、果物をしっかり食べましょう。 野菜、果物類を十分摂取できない
人は、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、コエンザイムQ10などの抗酸化物や、亜鉛、鉄、カルシウムなどの微量金属を毎日サプリメントとして
摂取してもよいでしょう。
◆ビタミンB群の補給を十分にしましょう。 バランスのよい食生活で十分補給されますが、食事に偏りがある場合には、ビタミンB群のサプリメント
もお勧めします。
◆肉類の摂取をできるだけ減らし、魚類をしっかり食べましょう。 これもEPA、DHAのサプリメントを摂取してもよいですが、週5日くらい魚を
食べれば、十分なEPA、DHAが体内に入ると思います。
◆毎日、適度な運動を必ず実施しましょう。 毎日40分のウォーキングをまずお勧めします。
◆家の中に引きこもらず、できるだけ家の外にでて、社会とかかわりを持って生きましょう。 仕事のある人は仕事を続け、仕事のない人も、
スポーツや趣味を生かし、家族や多くの隣人と交わりましょう。
◆高血圧、高脂血症の人は、必ず医療機関で治療を受け、正常レベルにコントロールしましょう。
◆特別なサプリメントとして、「イチョウ葉エキス」は、抗痴呆効果が確認されています。 専門医と相談のうえ、試してください。
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