日本人女性の寿命が85歳を超える時代となりました。
50歳頃から始まる女性の病気を簡単にまとめてみますと、閉経前後に、いわゆる更年期障害が出現し、その後男性と比較して少なかった
心血管障害が増加し、さらに男性より10年早く骨粗しょう症が起こってきます。 また、男性より高い頻度でアルツハイマー病も出現します。
このようにみてみると、閉経による急激な女性ホルモンの減少と、それに伴う体の変化が、こうした病気を引き起こす原因になっていると考え
られ、欧米では早くから心血管障害、アルツハイマー病、骨粗しょう症の予防として、女性ホルモン補充療法が積極的に行われてきました。
ところが、1990年後半から2002年にかけての大規模な臨床研究により、虚血性心疾患と脳卒中は、ホルモン補充療法によって逆に
発生頻度が高くなると発表され、欧米では以前ほど女性ホルモン補充療法を積極的に推奨しない方向に転換しました。
しかし、日本人は、欧米人と比較して疾病構造が違うため、この発表が日本人にもあてはまるのか疑問視する向きもあるので、この女性
ホルモン補充療法は、個々人の状態を様々な検査法によって正確に診断し、専門医のもとでリスク管理を行いながら実施すべきものであると
思われます。
ところで、婦人科領域では、女性ホルモン補充療法の言葉の使い方に定義があります。
子宮のある人にエストロゲン(卵胞ホルモン)を単独に使用すると、子宮内膜がん発生を高める危険性があるので、通常エストロゲンとプロゲステロン
(黄体ホルモン)両者を併用し、これを、ホルモン補充療法(HRT)と呼んでいます。
一方、子宮を削除したヒトにはエストロゲンを単独で用い、これをエストロゲン補充療法(EST)と呼んでいます。
・更年期障害はエストロゲン欠落症状と考えられ、HRTによる効果はきわめて有効
・骨粗しょう症に対して有効
・結腸・直腸がんの予防に有効
・虚血性心疾患と脳卒中の頻度を、むしろ軽度増大させる。
・静脈血栓塞栓症の頻度をかなり増大させる。
・乳がんの頻度を軽度増大させる。
・更年期障害に対してきわめて有効
・骨粗しょう症に対してもきわめて有効
・結腸・直腸がんの予防効果はなし
・虚血性心疾患に対してはHRTと異なり、その頻度を軽度減少させる。
・脳卒中の頻度を軽度増大させる。
・静脈血栓塞栓症の頻度を増大させる。
・乳がんの頻度を減少させる。
このように、HRTとESTの効果にはかなりの違いがあります。
女性ホルモン補充療法も、他のホルモン補充療法と同様に、慎重に治療されるべきであると判断されます。
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