女性は、50歳前後で閉経した後、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下することによって、骨粗しょう症が目に見えないところで
始まります。
日本骨代謝学界の骨粗しょう症診断基準に基づいて計算すると、閉経後の日本人女性が骨粗しょう症と診断される割合は、55〜59歳で
6%、60〜64歳で24%、70〜74歳で34%と、年齢に従って大きくなります。
一方男性は、女性より約10年遅れて骨粗しょう症が増加します。 この理由は、男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は女性のように
急速に低下することなく、70歳頃までかなり十分な量が保たれ、その一部が女性ホルモンに変換されているからです。
このように、女性の場合は50代から骨粗しょう症を防止する対策を講じる必要があるのです。
では、各年代における骨粗しょう症対策をみてみましょう。
骨の形成には、カルシウムのみでなく、リン、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンKをはじめとして、各種の栄養が必要で、
やはりバランスのとれた食生活が大切です。 現在、日本では骨粗しょう症の予防のためには最低800mgのカルシウムの摂取が
必要とされています。
しかし、カルシウムはもともと腸から吸収されにくいもので、成人では30〜50%位しか吸収されません。 しかも食物中にシュウ酸の多い
ほうれん草などの野菜があると、よりいっそう吸収されにくくなります。 食事中の食物繊維量も、あまり多すぎるとカルシウムの吸収は低下します。
また、缶ジュースやインスタント加工食品に多量に含まれているリン酸分(食品添加物として使用されている)を多量に摂取すると、
カルシウムがリン酸といっしょに便に排出される原因になります。 (食品中のカルシウムとリンの比は2対1クライがよいとされています)
このように、カルシウムはたくさん摂取しても、いろいろな要因で十分吸収されないこともあります。 骨粗しょう症の治療としてカルシウムを
摂取する時は、1日800mg以上の量が必要です。
さらに、カルシウムの吸収にはビタミンDが必要です。 ビタミンDは皮膚に日光が当たると活性化して、カルシウムの吸収
に必要なビタミンD3になります。 このように、ビタミンDを含む食品もしっかりと食べ、ある程度は日光にあたる生活が必要です。
また納豆や緑黄色野菜に含まれるビタミンKも骨の形成に大切な働きをしています。 カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを
含む食品を、バランスよく摂取することが大切ですね。
◎カルシウムを多く含む食品
干しエビ 10gで710mg
ししゃも(まる干し) 4尾で330mg
牛乳 200ccで220mg
煮干 5尾で220mg
木綿豆腐 1/2丁で180mg
◎ビタミンDを多く含む食品
にしん(燻製) 1本で24μg
うなぎ(蒲焼) 1人前で19μg
秋刀魚(生) 1尾で19μg
まぐろ(トロ) 1人前で14μg
塩鮭 1切れで12μg
◎ビタミンKを多く含む食品
納豆 100gあたり870μg
しその葉 100gあたり690μg
あしたば 100gあたり500μg
カブの葉(ゆで) 100gあたり370μg
おかひじき 100gあたり310μg
骨に荷重がかからないと、カルシウムは骨に入らないといわれています。
骨に荷重がかかると、骨に含まれているプロテオグリカン分子が、ピエゾ電気的な刺激をうけて骨タンパクが縦に整列し、骨の強度が
増してくるといわれています。 骨に荷重がかからない宇宙では、このような原因で骨がもろくなってしまいます。
寝たきりの老人や、手術後長期間のベッド生活を余儀なくされた人は、骨折がきわめて起きやすい状態になります。 したがって、骨を
強くするためにも毎日の運動療法が大切になります。
ビタミンDやカルシウムは、保険診療薬としても使用されていますが、日本の骨粗しょう症の診断基準に適応した患者さんにしか処方箋が
でませんので、必要であればサプリメントとしてこれらの薬剤を使用するのがよいでしょう。
また、この年代で特にお勧めのサプリメントはイソフラボンです。
大豆に多く含まれる成分で、イソフラボンは弱い「エストロゲン(女性ホルモン)」作用を持ち、エストジェンと同様に骨を強化する作用をもって
います。
白人と比較して日本人に前立腺がんが少ないのは、大豆の摂取量が多いからだと考えられています。 イソフラボンは、乳房などに対しては
逆に抗エストロゲン作用を発揮し、乳がんの抑制作用もあります。
60代では、実際に骨粗しょう症と診断される患者さんがかなりみられます。 このような人は、保険診療薬でカルシウム、ビタミンDを処方
してもらい、もちろん50代の人に紹介した食事や運動療法もぜひ実行してください。
さらに、60代で骨粗しょう症と診断された方におすすめの薬があります。
保険診療薬として2004年より使用されるようになったSERM(サーム:選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
という新しいタイプの薬です。 この薬は、エストロゲン(女性ホルモン)受容体に結合して、あるときは女性ホルモン様作用、
あるときは抗女性ホルモン作用(女性ホルモンと反対の作用)を発揮します。 すなわち、骨に対しては骨密度を増加させて骨の
質を高め、椎体骨折(腰が曲がる)の発生頻度を低下させます。 また、脂質に対してはコレステロール低下作用を示し、心血管障害の発生を
抑制します。 一方、子宮や乳腺などに対しては抗女性ホルモン作用を持ち、乳がんの発生頻度を約3分の1近くに低下させます。
更年期以降の女性は、女性ホルモンの低下に伴って、骨粗しょう症や、動脈硬化に伴う心血管障害が発生するわけですが、SERMには
これらを抑制する効果があるのです。
日本では、現在SEAMの中で、ラロキシフェン(商品名:エビスタ)が骨粗しょう症治療薬として承認されています。
この年代では、年をとればとるほど骨粗しょう症と診断される割合が急増してきます。 また、ちょっとしたことで骨折しやすくなっていますし、
すでに腰の曲がっている人や最近骨折を経験された人は、新たな再発に備えねばなりません。 近年、ビスフォスフォネート
という、骨を破壊する破骨細胞の作用を抑制する薬が保険診療薬として使用されるようになりました。
このビスフォスフォネートは、破骨細胞に取り込まれ、骨を破壊する機能を低下させ、最終的には破骨細胞自身を破壊します。
ビスフォスフォネートの代表薬であるリセドロネート(商品名:ベネット)についてその効果をまとめると、
・腰椎骨密度の増加作用
・骨粗しょう症による椎体骨折頻度の低下
・骨粗しょう症による腰痛の軽減
・大腿骨骨折頻度の減少
・椎体以外の骨折頻度の低下
が挙げられ、はっきりとした骨折予防効果を持っています。
ただ、食道潰瘍や消化性潰瘍を起こしやすい特性もあり、使用上の注意が必要です。
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