糖尿病には、小児期に発症してインスリンが必要な1型糖尿病と、大人になって発症する2型糖尿病に分類されますが、ここでは2型糖尿病
について解説します。
厚生労働省の2002年の調査によると、糖尿病が強く疑われる人が740万人、可能性を否定できない人を合わせると1620万人にもなり、
年々増加する傾向が見られています。 しかし、糖尿病人口はきわめて増大しているにもかかわらず、病院で受診している患者さんはその
3分の1程度なのです。
糖尿病はいろいろな合併症が起きてから治療を始めるのではなく(それでは遅いのです)、まったく病状のないときから治療を
スタートすべきなのです。
このページでは、
◆食後過血糖の防止とインスリン抵抗性の改善
に注目してアンチエイジング医療的な解説をしていきます。
インスリン抵抗性とは、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されていても、インスリンを受け取る細胞のインスリン感受性が低下し、過血糖状態
が続くことを意味します。 また、過血糖を改善するために、逆にインスリン分泌は過剰になってしまいます。
通常、食事をすると、糖分が血中に入り、膵臓からインスリンが分泌されます。 インスリンによって、肝臓からの糖の放出が抑制され、また
肝臓や骨格筋の細胞内への糖の取り込みが促進されます。
このようにして、血中の糖分が細胞内に移行し、すみやかに血糖値が正常化します。 ところが、インスリン抵抗性状態では、このメカニズムが
作動せず、血中の糖分が高くなっても、なお肝臓での糖新生が続き、また肝臓や骨格筋への糖の取り込みも十分に行われないのです。
こうして、過血糖、高インスリンの状態が長期間続くと、肥満、高脂血症、動脈硬化、高血圧の原因になり、アンチエイジングとは
まったく正反対の方向へ進んでいくことになるのです。
このインスリン抵抗性を起こす原因としては、遺伝的なもの、肥満、運動不足、高脂肪食といった生活習慣によるもの、また長期間の高血糖
による毒性によるものなどが考えられます。 特に日本人は民族的に肥満細胞から分泌される善玉物質のアディポネクチンがもともと少ない
民族といわれており、遺伝的にインスリン抵抗性になりやすい素因を持っていると考えられています。 したがって、年をとってくると、そのような
素因のうえに、肥満、運動不足、ストレス、高脂肪食が加わり、糖尿病が知らず知らずのうちに忍び寄ってくるのです。
◆インスリン抵抗性が疑わしい人
・肥満者(BMI25以上)
・食後2時間以降の血糖値が140mg/dl以上のひと
検診や病院で、ときどき血糖値を測ってもらい、食後の血糖値がいつも高い人は要注意です。
少しでも疑いがあれば、次の検査が必要となります。
◆インスリン抵抗性が疑わしい人が行う検査
・空腹時のインスリン値の測定
・HbA1C
・糖負荷試験
インスリン抵抗性状態では、食後の過血糖が長期間続きますので、空腹時の血糖値が正常値でも、空腹時のインスリン値が高い値のまま
維持されます。 HbA1Cは糖尿病の診断に通常行われる検査で、ほぼ1ヶ月間の平均血糖値を意味します。 インスリン抵抗性状態では
必ずしも高い値にはなりませんが、正常の上限値程度以上であれば一度検査をする必要があります。
これらの検査でかなり疑わしいと診断されたら、糖負荷試験で糖とインスリンの動きを詳細に調べてみましょう。
◆軽症糖尿病(インスリン抵抗性)の治療
・食事療法
・適切な運動療法
・インスリン抵抗性改善薬の使用
インスリン抵抗性状態が続くと、大血管障害の合併率が高まることが判明しています。 大血管障害とは、脳卒中や狭心症・
心筋梗塞を意味し、いずれも命にかかわる重大な疾病です。 したがって、あなたがインスリン抵抗性状態だと判明した場合、
軽度糖尿病状態と考えて治療を行う必要があります。
・食事療法(ダイエット)
これはあくまで糖尿病治療の根幹であり、またアンチエイジング医療の基本でもあります。 普通の運動量の人は、標準体重×25kcalが
きほんとなります。 詳しくは肥満の抗加齢医療、および
ダイエットサプリメントをご覧ください。
・運動療法
次に運動療法ですが、元気な人は、まず1日約40分、汗をかくくらいのウォーキングをお勧めします。 その後は、各人の状況に合わせて
個別のメニューが必要になりますので、各医療機関にご相談ください。
各人のいろいろな都合から、努力しても体重が減らせない人、運動がほとんどできない人などは、次に解説する薬物療法に進んでみましょう。
努力してもなかなか体重がコントロールできない人、十分な運動ができない人は、積極的にインスリン抵抗性改善薬を使用すべきです。
食後の過血糖が長期間続くと、必ず大血管障害を起こします。 こうした大きな病気を起こさないことが、元気で長生きするための基本中の
基本です。
現在、保険治療薬としては、次の3種類のインスリン抵抗性改善薬が使用されています。
◆インスリン抵抗性改善薬
・αグルコシダーゼ阻害薬 ・・・ ベイスン、グルコバイなど
・ビグアナイド剤 ・・・ メルビン
・チアゾリジン誘導体 ・・・ アクトス
食事をして、でんぷんが小腸内に入ると、αグルコシダーゼによってブドウ糖に分解されて吸収されます。
αグルコシダーゼ阻害剤は、この酵素を阻害し、でんぷんからブドウ糖に分解されるのをブロックします。 このようにして、
ブドウ糖の小腸内での生成が遅くなり、血中に吸収される糖分のスピードもゆっくりとなって、食後の過血糖がより少なくなります。
ビグアナイド剤は、肝臓での糖の新生を抑制し、肝臓からの糖分の放出を減少させます。 インスリン抵抗性状態では、
腸から血中に糖分が吸収されても、なお肝臓からの糖の放出が続いていますので、ビグアナイド剤によって、この部分の食後の過血糖を防ぐ
ことができます。
チアゾリジン誘導体は、特に筋肉での糖分の取り込みを促進します。 チアゾリジン誘導体を内服すると、同じ量のインスリンに対して、
より効率的に糖分が利用されるようになります。 さらに、チアゾリジン誘導体には、直接的に動脈硬化を防止する効果も
認められています。 インスリン抵抗性による食後過血糖が動脈硬化を引き起こすことが判明していますので、チアゾリジン誘導体は、二重の
作用機序で、われわれの体の動脈硬化を防止すると考えられます。
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